プレホスピタルケア(病院前救護)

私は境港消防署で主に救急隊員として勤務しています。病院内で活動する医師や看護師に対し、消防業務における救急活動は病院外を活動のフィールドとしています。

119番の通報を受けて救急車で現場に向かい、到着後は傷病者の観察や応急処置、救急救命処置を⾏いながら、医療機関へ搬送することが医療従事者としての救急救命士の仕事です。その間の処置はプレホスピタルケア(病院前救護)といわれ、救命率やその後の医療処置において重要な役割を果たします。

救急救命士

救急救命士とは、病院前救護体制を充実・強化し、救命率の向上を図るために出来た国家資格で、傷病者の症状に合わせ、救急車に積載してある様々な救急資機材を駆使し病態が悪化しないよう病院まで搬送するものです。また重度傷病者については、医師の指示の下、必要な救急救命処置(静脈路確保、器具を用いた気道確保、薬剤投与)を行います。

ある救急現場で、めまいと吐き気を訴える傷病者を搬送しました。背中をさすり、声をかけながら搬送を行い無事に病院へ到着したのですが、その傷病者から「ありがとう。安心して病院へ行けました。」と声をかけていただきました。その言葉は今でも忘れないですし、傷病者に寄り添える救急救命士でありたいと改めて思った事案となりました。

傷病者の「ありがとう」に寄り添えるよう

 わたしは祖母が倒れ脳死状態となったことが、消防士を目指すきっかけとなりました。当時大学で心肺蘇生法を学び、その指導を行っていたため自信があったものの、目の前で倒れた祖母に怖くて何も出来ず悔しい思いをしました。なによりも自分の大切な家族を救えない虚しさは今でも忘れません。人を助けることが出来る人間になりたいと強く願ったことがわたしを消防士にさせてくれました。

 年間1万件を超える救急要請の中で、救急救命士の役割はとても大きなものです。救急救命士という資格は、傷病者の苦しみや辛さを少しでも和らげることが出来る最高の仕事だと感じます。

 これからも傷病者の「ありがとう」に寄り添えるよう、救急救命士として成長を続けていきます。